2020/03/21

Column: お金より価値あるモノを信じて

極論すれば、介護業界は無い方が良い世界だ。だって、皆が健康かつそれぞれの棲み家で日常生活を送れた方が幸せじゃないか。だから、この業界には「人の不幸が飯の種」に通じるロジックが潜在する。しかし、そんな職はいくらでもあって、医者も弁護士もそうだが、医者や弁護士と介護士が決定的に相異なるのは賃金だろう。医者の平均年収が1696万円、弁護士が1026万円なのに反し、介護士は僅か378万円だ。

介護はお金じゃない。」渡辺さん(なべちゃんデイサービス 店主)が言った。

介護に携わる人が、利用者の幸せや喜びに自らのやりがいを感じているのはきっと、それとリンクする。お金より価値あるモノは絶対にあって、居宅訪問に同行し、Wさんが吐露した「デイが楽しい」の7文字はプライスレスな働き甲斐を体感した瞬間だった。その新境地は何より人間臭く、後来AIに取って変わられる余地がない、非常に属人的なこの業界だからこそ痛感したはずだ。

介護って「対モノ」でなく「対ヒト」だから。「」だから。「ひと」が全てだから。人にしかあり得ない、極めて人間染みた職だから。

それ故、いつか六本木のタワマン13階でエレガントに暮らしを立てるのが、人生における成功と思案する拝金主義の私が、人間味溢れる福祉に従事する人々と相対し、お金より価値あるモノを信ずることができた。

その人らしさやその人の真の魅力に気付いたとき、とても温かい気持ちになる。」と丹野さん(グループホーム ぶなの森 管理者)、「感謝、信頼される喜びは原点。」と佐藤さん(介護老人保健施設 ゴールドメディア 事務課 課長)が教えてくれた。

福祉はここにAIとの懸隔があり、自然と他者を思いやり、黄金律を体現するひとの美しさが滲む職業だ。

作 : 「福ひろば」インターンシップ1期生

立命館大学2回 石上温大