「記録が終わらなくて残業になる」「書くことに疲れてしまう」——そんな声は、介護現場の至るところから聞こえてきます。スタッフが利用者と向き合う時間を守るために、記録業務をどう変えるか。これは多くの経営者・管理者が悩み続けているテーマです。今回は「話すだけで記録が完成する」音声AI記録サービスの最前線と、ICT導入を制度面から後押しする2026年6月介護報酬改定のポイントを整理します。
「ながらかいご」が全国展開へ──会話しながら記録・申し送りが自動完成する音声AI
豊田高専発スタートアップの株式会社NAGARAは、音声AI記録サービス「ながらかいご」の全国展開に向けて6200万円の資金調達を実施しました。このサービスは、介護士が利用者との会話やケア中に自然に話しかけた内容をAIがリアルタイムで解析し、申し送りや介護記録を自動生成します。スマートフォン1台で完結し、専用端末やPCへの入力作業は不要です。設立からわずか2か月で全国41施設がトライアル導入したという実績が、現場での需要の大きさを物語っています。「書く」ことへの疲弊が減り、スタッフが利用者とより向き合える時間が生まれることが、広い支持を集めている理由です。
出典:介護記録を”話すだけ”で完結──NAGARA、6200万円を調達し音声AIサービスの全国展開へ(kepple)
押さえておきたいポイント
- ケアや会話をしながら音声だけで記録・申し送りを自動生成
- スマホ1台で完結。専用端末・PCへの入力不要
- 設立2か月で全国41施設がトライアル導入(実績)
- 「書く」手間がゼロになることで、スタッフが利用者との時間を大切にできる
ワイズマンが「音声記録AIオプション」をリリース──インカムで話すだけ、ハンズフリー記録が実現
介護ソフト大手の株式会社ワイズマンは2026年、インカム(耳掛け型無線機)を通じた音声入力で介護記録を自動生成する「音声記録AIオプション」をリリースしました。BONX Workというインカムアプリと連携し、業務中に自然に話しかけた内容がリアルタイムでAIに認識され、そのまま介護記録として蓄積されます。記録のためにステーションに戻る必要がなく、手を止めずに記録できるのが最大の特長です。ワイズマンは多くの介護事業所が導入している記録・請求ソフトを提供しており、既存システムとシームレスに連携できる点も導入ハードルを下げます。大手ベンダーがAI音声記録を標準オプションとして提供し始めたことは、この技術が介護現場で「当たり前」になる時代が近づいているサインです。
出典:介護現場における記録業務を支援する「音声記録AIオプション」をリリース(ワイズマン公式)
押さえておきたいポイント
- インカム経由でハンズフリー。ケアを止めずにその場で記録できる
- 既存のワイズマンシステムと連携。記録から請求まで一貫管理
- 大手ベンダーがオプション提供を開始。AI音声記録が「標準装備」へ
- 既存ユーザーはシステム構築なしに追加できる
2026年6月介護報酬臨時改定──「ICT導入+生産性向上」が処遇改善加算の上乗せ要件に
2026年6月施行の介護報酬臨時改定(改定率+2.03%)では、処遇改善加算の拡充が中心ですが、施設・居住サービスでは「生産性向上推進体制加算」の取得が上乗せ区分(Ⅰロ/Ⅱロ)の要件の一つとなっています。見守り機器などのテクノロジー導入が、この加算の具体的な取り組みとして明記されており、ICT・DX導入と処遇改善加算が連動する仕組みへと移行が進んでいます。「ICTを導入すると補助金・加算がもらえる」という時代から、「未導入だと加算で競合他社に後れを取る」という局面に変わりつつあります。音声AI記録や見守り機器の導入は、スタッフの負担軽減だけでなく、制度上のメリットにも直結する経営判断です。
出典:2026年の介護報酬改定は6月に臨時施行!改定内容と対策を解説(ケアコム)
押さえておきたいポイント
- 2026年6月改定で生産性向上推進体制加算が処遇改善加算の上乗せ要件の一つに
- 見守り機器などICT導入が加算の具体的な取り組みとして明記
- ICT未導入事業所は処遇改善加算の上乗せ区分で不利になる可能性
- ICT導入を「コスト」ではなく「加算獲得の経営戦略」として捉え直す時期
介護・障がい福祉現場の研修事情と福ひろばラーニング
介護・障がい福祉の現場では、慢性的な人手不足の中で日々の業務に追われながら、法定研修を毎月欠かさず開催しなければなりません。テーマの選定、資料の準備、スタッフの時間調整——これだけで管理者の工数が毎月相当かかるのが実情です。夜勤・パート・短時間勤務など働き方が多様なため、スタッフが全員同じ日時に集まれるわけでもなく、「悩みながら何とか開催している」という声が全国の事業所から聞こえてきます。
私たちも郡山・矢祭で介護事業所を運営しているので、この大変さはよくわかります。そこで開発したのが「福ひろばラーニング」です。スマホで7分程度で読み終わるコースをLINE・メールで配信し、スタッフがスキマ時間に自分のペースで受講できる形式にしています。集合研修の場を設けなくても、各自が好きなタイミングで受講できるため、夜勤明けや休憩時間にさっと受講することも可能です。
ただし、「早く済ませればいい」という発想では作っていません。カリキュラムは介護現場の実務経験を踏まえた監修のもと、現場に直結する内容を厳選しています。各コースの末尾には小テストがあり、理解度を自分で確認しながら進められます。繰り返し受講もでき、修了証の発行にも対応しています。未受講のスタッフへの自動リマインドも備えており、「配信したきり誰もやらない」という事態を防ぐ仕組みも整えています。人手不足と研修義務の板挟みに悩む事業所の、選択肢の一つとしてご参考になれば幸いです。
(詳しくは記事末尾のご案内をご覧ください)
まとめ
「話すだけで記録が完成する」時代が、介護現場にじわじわと広がっています。スタートアップから大手ベンダーまで、音声AI記録サービスの選択肢が急速に増えてきました。さらに2026年6月の介護報酬改定では、ICT導入が処遇改善加算の要件にも組み込まれ、DX推進は経営課題として待ったなしの状況です。記録業務の効率化は、スタッフが利用者と向き合う時間を守るための第一歩でもあります。まずは自事業所に合う1つのサービスから試してみることをおすすめします。
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