2026/05/21

当たり前のことを当たり前に続けるチームをつくる|稲盛和夫「六つの精進」に学ぶ介護事業所の人材育成

介護現場で「なぜうちのスタッフは挨拶が少ないのだろう」「感謝の言葉がなかなか定着しない」と感じたことはないでしょうか。研修で伝えても、なかなか習慣にならない——そんな悩みを持つ経営者・管理者の方は多いかと思います。実は、そうした「当たり前のこと」こそがチームの土台をつくると、京セラ・KDDI創業者であり、JAL再建を成し遂げた稲盛和夫氏は生涯をかけて示してくれました。今回は稲盛氏の「六つの精進」を軸に、介護・福祉の職場でのチームづくりと人材育成の考え方をお伝えします。

「当たり前のことを一生懸命やる」ことの意味

稲盛和夫氏は著書『生き方』(サンマーク出版)の中で、こう述べています。

「一生懸命働くこと、感謝の心を忘れないこと、善き思い、正しい行いに努めること、素直な反省心でいつも自分を律すること、日々の暮らしの中で心を磨き、人格を高めつづけること。すなわち、そのような当たり前のことを一生懸命行っていくことに、まさに生きる意義がある」

(出典:稲盛和夫オフィシャルサイト https://www.kyocera.co.jp/inamori/

これは介護の現場にこそ、深く響く言葉ではないでしょうか。利用者への丁寧な声かけ、同僚への感謝の一言、先輩や上司への素直な姿勢——こうした「当たり前のこと」の積み重ねが、チームの信頼関係を育て、離職を防ぎ、サービスの質を守っていきます。

また稲盛氏は「感謝の心が幸福の呼び水なら、素直な心は進歩の親であるかもしれません」とも述べており、素直さが人の成長を支える根本だと考えていました。新人スタッフが素直に学べる職場環境をつくることは、管理者の大切な役割の一つです。

押さえておきたいポイント

  • 挨拶・感謝・素直さは「研修で一度教えるもの」ではなく「職場文化として育てるもの」
  • 管理者自身が先に実践することで、スタッフへ自然と伝わっていく
  • 「当たり前のことの継続」が、組織の安定と信頼の土台になる

稲盛和夫「六つの精進」が示すチームの育て方

稲盛氏が著書『六つの精進』(サンマーク出版)で示したこの指針は、リーダー個人の心がけとしてだけでなく、チーム全体の行動指針として活用できます。

  1. 誰にも負けない努力をする — 量や結果よりも「本気で取り組む姿勢」を管理者がスタッフに見せることから始まります
  2. 謙虚にして驕らず — ベテランほど謙虚に、後輩や新人の声に耳を傾ける文化をつくることが大切です
  3. 反省のある毎日を送る — ミスを責めるのではなく、「次はどうするか」を一緒に考える場をつくります
  4. 生きていることに感謝する — 働けること、共に働く仲間がいることへの感謝を、日々の言葉にする習慣を育てます
  5. 善行・利他行を積む — 「利用者のため」だけでなく、「仲間のため」という利他の心を組織全体で大切にします
  6. 感性的な悩みをしない — 過去の失敗をいつまでも引きずらず、今日から新たに取り組む前向きな雰囲気をつくります

稲盛氏はこの「六つの精進」がチームに浸透するにしたがって、組織の成果も驚くほど変わっていったと語っています。介護現場でも「感謝する・謙虚でいる・反省を次に活かす」という姿勢の積み重ねが、スタッフの定着率向上や職場の雰囲気改善につながっていくのだと思います。

押さえておきたいポイント

  • 「六つの精進」は特別なことではなく、日々の小さな実践の積み重ね
  • 管理者が「謙虚さ」と「感謝」を体現することで、職場全体の空気が変わる
  • 反省を「責める文化」ではなく「学ぶ文化」として位置づけることが大切

挨拶・感謝・素直さを「当たり前」にする職場づくりの実践

こうした「当たり前のこと」を実際にどのように職場に根付かせていけばよいのでしょうか。介護現場のチームづくりで取り入れられている具体的な取り組みをご紹介します。

  • 管理者が先に挨拶をする習慣をつくる — 「挨拶してくれない」と悩む前に、経営者・管理者が毎日先に声をかけることが出発点です。リーダーの行動は、スタッフの行動規範になります
  • 朝のミーティングで「ありがとう」を一言共有する — 前日に助けてもらったことを短く伝え合う時間をつくるだけで、職場の雰囲気が少しずつ変わり始めます
  • 新人の「素直な疑問」を歓迎する文化をつくる — 「なぜこうするのですか?」という問いかけを丁寧に受け止めることで、学び合いの連鎖が生まれます
  • ふりかえり(カンファレンス)を「学ぶ場」として運営する — 「うまくいったこと」と「改善したいこと」をセットで話し合う定期的な場を設けることで、チームの成長が加速します

厚生労働省が実施している「介護職員の働きやすい職場づくり内閣総理大臣表彰・厚生労働大臣表彰」でも、計画的な研修の実施やスタッフ間のコミュニケーション促進が評価基準に含まれています。「当たり前のこと」を丁寧に積み重ねた事業所が、実際に表彰されています(出典:厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/kaigo-hyosyo-top.html )。

押さえておきたいポイント

  • 「挨拶・感謝・素直さ」は、管理者のあり方から職場全体に広がっていく
  • 小さな「ありがとう」の積み重ねが、スタッフの離職防止と定着率の向上につながる
  • 「ふりかえりの場」はミスを責める場ではなく、次の一歩を一緒に考える場として活用する

まとめ

稲盛和夫氏の「六つの精進」が教えてくれるのは、「特別な仕組みを整えることよりも、当たり前のことを丁寧に続けること」の大切さです。挨拶、感謝、素直さ、謙虚さ、反省——これらは介護・福祉の現場においても、チームづくりの根本だと思います。経営者・管理者の皆さまが率先してこうした姿勢を示すことで、スタッフが安心して働ける職場文化が少しずつ育まれていきます。難しい取り組みを始める前に、まず「おはようございます」と笑顔で先に声をかけることから、今日も一歩ずつ積み重ねていきましょう。


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