「ケアプランはベテランケアマネが作るもの」「認知症の早期発見は専門医の仕事」──そんな常識が、AIの進化によって少しずつ変わり始めています。2026年、介護現場のDXは「記録の効率化」から「判断をAIが支援する」段階へと踏み込んできました。今回は最新の事例から3つのトピックをご紹介します。
ケアプランAIで作業時間を65%削減──愛媛県の先行事例から
ケアプラン作成は、ケアマネジャーの業務の中でも特に負荷が大きい仕事のひとつです。利用者の状態を多角的に分析し、個別のニーズに合ったサービスを組み合わせる高度な判断が求められます。
愛媛県では、CDI社が開発したAIケアプラン作成支援システム「SOIN(ソワン)」を活用した事例が注目されています。4.5万件以上のケアプランデータを学習したAIが、利用者のADL・認知機能・栄養状態などを分析し、最適なケアプランの案を自動提案する仕組みです。この導入により、ケアマネジャーの作業時間が約65%削減されたと報告されています。
AIはあくまで「提案」であり、最終判断はケアマネジャーが行います。「AIの提案を見ながら、漏れや見落としを確認できる」という使い方が、現場での受け入れられやすさにつながっているようです。厚生労働省も、ケアプランや担当者会議の議事録原案作成に生成AIを活用することが「業務の効率化につながる」と明記しています。
押さえておきたいポイント
- AIは4.5万件のケアプランデータを学習し、最適な案を自動提案
- ケアマネジャーの作業時間が最大65%削減された先行事例あり
- 最終判断はあくまでケアマネジャーが行う「支援ツール」
- 厚生労働省もケアプランへの生成AI活用を業務効率化策として位置づけ
出典:https://www.fc-soft.jp/media/useful_info/a84
20秒の音声で認知機能を判定、BPSDを30分前に予測する「予測型ケアAI」
AI活用のもう一つの最前線が「予測型ケア」です。これまでは「異変に気づいてから対応する」のが主流でしたが、今やAIがトラブルを起きる前に知らせてくれる時代になってきました。
たとえば、「DeCaAI」というシステムは、IoTセンサーの環境データや介護記録を統合分析し、徘徊や暴言といったBPSD(認知症周辺症状)を「30〜60分前に予測」します。また、「ONSEI」という音声認知機能判定アプリは、わずか20秒の音声データから、98%の精度で認知機能の変化を判別できるとされています。
これらのツールを活用することで、夜間の見守り不安の軽減や、家族への状態共有の精度向上にもつながります。まだ広く普及している段階ではありませんが、先行導入している施設からは「スタッフの心理的安心感が上がった」という声も出ています。
押さえておきたいポイント
- DeCaAI: IoT・介護記録を統合分析し、BPSDを30〜60分前に予測
- ONSEI: 20秒の音声で認知機能の変化を98%の精度で判別
- 「異変に気づく」から「異変を予測する」ケアへのシフトが進む
- 夜間対応の質向上・スタッフの心理的負担軽減に貢献
出典:https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20251112.html
2026年度スタート「介護情報基盤」──DXの土台となるインフラが整う
2026年度から、国が主導する「介護情報基盤」の本格運用が始まります。これは、要介護認定情報・ケアプラン・サービス利用状況などのデータを、医療機関・ケアマネジャー・介護事業所が横断的に共有できるようにするデジタル基盤です。
これまでは、入院・退院のたびに「また一からヒアリング」という状況が当たり前でした。介護情報基盤が整うことで、関係者間の情報連携がスムーズになり、利用者にとっても事業所にとっても余分な手間が減ることが期待されています。
介護DX市場は2024年度に545億円規模に達しており、政府も約300億円規模の補助事業でテクノロジー導入を後押ししています。この基盤の整備は、ケアプランAIや見守りシステムなど個別ツールの効果をさらに高める「土台」となります。
押さえておきたいポイント
- 2026年度から「介護情報基盤」の本格運用がスタート
- 要介護認定情報・ケアプラン・利用状況を医療・介護で横断共有
- 入退院時の情報連携の手間が大幅に削減される見込み
- 介護DX市場は2024年度に545億円規模。政府補助も約300億円規模
出典:https://www.members.co.jp/column/20260327-nursingcare-dx
まとめ
ケアプランAI・予測型ケア・介護情報基盤──2026年の介護DXは、「効率化」の次のステージへ進み始めています。ただし、どのツールも「AIがすべてを決める」のではなく、「スタッフが判断しやすくなる仕組み」として設計されている点が共通しています。テクノロジーはあくまで現場を支えるための手段です。自分たちの事業所に合ったものを、焦らず一歩ずつ取り入れていくことが大切ではないでしょうか。
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