2026/06/16

稲盛和夫「自燃型人材」論に学ぶ介護チームづくり|スタッフが主体的に動く組織をつくるリーダーの心得【介護事業所の経営者・管理者向け】

利用者さんへの声かけがいつも温かいスタッフ、指示がなくても先を読んで動けるリーダー――そういう人が一人いるだけで、職場の空気はがらりと変わります。「どうしたら、自分から動いてくれるスタッフが増えるのか」。介護・福祉の現場で管理職をしていれば、一度は真剣に考えたことがある問いではないでしょうか。京セラを創業し、日本航空を再建した経営者・稲盛和夫は、この問いに生涯向き合い続けました。今日は稲盛の「自燃型人材」論から、介護・福祉現場のチームづくりのヒントを探ります。

自燃型・可燃型・不燃型――稲盛和夫が見た「人材の3タイプ」

稲盛和夫は、物質の燃え方になぞらえて人材を3つに分けました。

  • 自燃型:誰に言われなくても自分からカッカと燃え上がり、情熱を持って行動する人
  • 可燃型:自燃型の人が近くにいると共鳴して燃え上がることができる人
  • 不燃型:周りがいくら熱くなっても、なかなか火がつかない人

稲盛はこう語っています。「いかに多くの『自ら燃える人』をつくれるかということが、経営を左右する鍵だ」(出典:稲盛和夫オフィシャルサイト「自ら燃える」https://www.kyocera.co.jp/inamori/about/thinker/philosophy/words13.html)。

介護の現場でも、このタイプの違いを肌で感じている方は多いはずです。新しいケアへの取り組みが始まったとき、「ぜひやってみたい」と真っ先に手を挙げるスタッフ、周りが動き出すと一緒に乗ってきてくれるスタッフ、どれほど声をかけても反応が薄いスタッフ――3つのタイプは確かに存在します。大切なのは、「全員を自燃型にしよう」と焦るのではなく、自燃型が周囲を引っ張り、可燃型が共鳴する流れをつくること。その連鎖が「燃える集団」を生みます。

押さえておきたいポイント

  • 人材には「自燃・可燃・不燃」の3タイプがある
  • 自燃型が多い組織ほど、指示がなくても動く文化が育ちやすい
  • 可燃型を燃やす「場」と「きっかけ」をつくるのがリーダーの役割

「分身の術」とコンパ――稲盛が実践した「場づくり」

京セラがまだ中小零細企業だった創業期、稲盛は「孫悟空が毛を抜いてひと吹きするとたくさんの分身が現れる。自分もそういう分身を育てたい」と痛烈に感じたと語っています(出典:日本経済新聞「稲盛和夫氏のリーダー育成 『分身の術』やコンパに原点」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJE31AL40R30C22A8000000/)。

この思いが「アメーバ経営」の出発点です。組織を小さな単位に分け、それぞれのリーダーが経営者感覚を持って動く仕組みをつくることで、稲盛自身の「分身」が現場の各所で機能するようにしたのです。

また、稲盛は「コンパ(懇親の場)」も大切にしました。「機会を見つけてはコンパを開き、リラックスした雰囲気の中、膝を突き合わせて語り明かした」と記録されています。仕事の目標や人生の価値観を腹を割って話すこのような場が、スタッフの内発的な動機を引き出す機会でもありました。

介護の現場に置き換えれば、朝礼やミーティングを「指示の伝達」だけで終わらせず、スタッフが「なぜこの仕事をしているか」を語れる場にする工夫が、稲盛流の「場づくり」につながります。

押さえておきたいポイント

  • 「分身を育てる」とは、自分の哲学を理解して動けるリーダーを各所につくること
  • コンパ(対話の場)は命令でなく共感でチームをつなぐ手段
  • 介護現場では、ミーティングや個別面談を「対話の場」として活用できる

「リーダーは心理学者でなければならない」――スタッフの心に関心を持つ

稲盛和夫の教えを受け継ぐ京セラの経営幹部は、「リーダーはメンバーの心の状態を把握し、最適な環境を整える存在でなければならない」という言葉を大切にしています(出典:京都ビジネス大学 大学連携型ソーシャル・イノベーション人材養成プログラム https://www.cyber.kbu.ac.jp/kbu/siprg/topics/2025/04/content-2.html)。

「管理する」ことと「理解する」ことは違う――これが稲盛の一貫したメッセージです。スタッフの言葉の裏にある不安や迷い、やりがいを感じている瞬間、燃え尽きそうになっているサイン。それを読み取ることが、リーダーに求められる「心理学者」としての仕事です。

介護の現場は、人手不足・夜勤・利用者の急変・ご家族対応など、精神的な負荷が重なりやすい職場です。だからこそ、管理者が「なんか最近元気がないね」と自然に声をかけられる関係性や、「困ったことがあれば話せる」と思えるチームの空気が、離職防止と主体性の両方を支える土台になります。稲盛が説いた「自燃型を育てる」第一歩は、スタッフ一人ひとりの「心」に関心を向けることから始まります。

押さえておきたいポイント

  • リーダーに求められるのは「管理力」だけでなく「心を読む力」
  • スタッフのやりがいや不安を把握することが、自燃型を育てる起点になる
  • 「困ったら話せる」関係性が、主体性ある職場文化の土台となる

まとめ

稲盛和夫の「自燃型人材」論には、介護・福祉現場のチームづくりにそのまま応用できる視点が詰まっています。すべてのスタッフを自燃型にしようとするのではなく、自燃型が輝ける場をつくり、可燃型に火がつく環境を整える――それが経営者・管理者の大切な仕事のひとつです。日々の対話を大切にし、スタッフの「なぜこの仕事をするのか」という気持ちに寄り添うことが、主体的に動く強いチームへの第一歩となるでしょう。


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