2026/08/25

松下幸之助「衆知を集める経営」に学ぶ|一人の知恵より衆知を集める組織づくりの精神【介護事業所の経営者・管理者向け】

「うちのスタッフは、なぜ指示待ちになってしまうのだろう」——多くの介護・福祉事業所の経営者・管理者が、一度はこの悩みにぶつかったことがあるのではないでしょうか。人手不足の中でリーダーが一人で判断・指示を抱え込むほど、現場は疲弊し、スタッフの主体性は育ちにくくなります。今回は「経営の神様」松下幸之助の教えから、介護現場の組織づくりに活かせるヒントを考えます。

松下幸之助の「衆知を集める経営」とは

松下幸之助は著書『実践経営哲学』(PHP研究所、1978年)の中で、「一人の知恵よりも二人の知恵、二人の知恵よりも三人の知恵というように、衆知を集めることがいかに大事であるかということを、私は自分の体験を通じて痛感してきた」と述べています。これは、リーダー一人がすべてを決めるのではなく、現場で働く一人ひとりの気づきや意見を積極的に引き出し、経営に反映させる姿勢を説いたものです。

介護・福祉の現場は、利用者一人ひとりの状態やご家族の事情によって最善のケアが異なる、まさに「現場に答えがある」仕事です。にもかかわらず、研修や業務改善の方針を管理者だけで決めてしまうと、実際に利用者と向き合っているスタッフの実感とずれてしまうことが少なくありません。朝礼やミーティングで「気づいたことを一言でいいから話してほしい」と問いかけるだけでも、衆知を集める第一歩になります。

押さえておきたいポイント

  • 衆知経営とは「リーダーが一人で背負わない」組織のつくり方
  • 出典:松下幸之助『実践経営哲学』(PHP研究所、1978年)
  • 現場の気づきを拾う仕組み(一言メモ・ミーティングでの発言機会など)が第一歩

「人をつくるところ」に学ぶ人材育成の視点

松下幸之助は「松下電器は人をつくるところでございます。あわせて電気製品をつくっております」という言葉を残したことでも知られています(出典:パナソニック公式サイト「松下幸之助一日一話」)。製品づくりの前に、まず人を育てることを経営の土台に置く姿勢は、業種を超えて多くの経営者に影響を与えてきました。

介護・福祉の仕事は「人が人を支える」仕事です。どれだけ設備やICTを整えても、最終的にケアの質を左右するのはスタッフ一人ひとりの姿勢と力量にほかなりません。だからこそ、新人研修や法定研修を「義務だから仕方なくやるもの」として扱うのではなく、「人を育てる投資」として位置づけ直すことが、遠回りに見えて実は組織づくりの近道になります。

押さえておきたいポイント

  • 「人をつくる」ことを経営の土台に据えた松下幸之助の姿勢
  • 出典:パナソニック公式サイト「松下幸之助一日一話」
  • 研修を「義務」ではなく「人への投資」として捉え直す視点

介護現場でどう活かすか

衆知を集める経営も、人を育てる姿勢も、特別な仕組みを一から作らなくても、日々の関わり方を少し変えるだけで始められます。たとえば、申し送りやカンファレンスの場で「どう思う?」とスタッフに問いを投げかける、ヒヤリハット報告を叱る材料ではなく改善のヒントとして扱う、といった小さな積み重ねが、スタッフの「自分の意見が反映される」という実感につながります。

私たちはなひろも郡山・矢祭で介護事業所を運営しているので、人手が限られる中でリーダーがすべてを抱え込みがちになる大変さは、身をもってよくわかります。だからこそ「一人で決めない」「一人で育てようとしない」という視点を持つだけでも、日々の負担の感じ方が変わってくるはずです。

押さえておきたいポイント

  • 特別な制度がなくても「問いかける」習慣から衆知経営は始められる
  • ヒヤリハットや申し送りを「改善のヒントを集める場」に変える
  • リーダーが一人で抱え込まない組織づくりが、結果的にスタッフの主体性を育てる

まとめ

松下幸之助の「衆知を集める経営」と「人をつくる」という教えは、時代や業種を超えて、介護・福祉の現場にも通じるものです。リーダーが一人で判断や指示を抱え込むのではなく、現場の声を拾い、スタッフを育てる姿勢そのものが組織の力になります。今日から始められる小さな問いかけの積み重ねが、やがて主体的に動けるチームをつくっていきます。忙しい毎日の中でも、ふと立ち止まってスタッフの声に耳を傾ける時間を持ってみてはいかがでしょうか。


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この記事の監修
監修者 塙啓之

塙 啓之はなわ ひろゆき
株式会社はなひろ 代表取締役

介護業界で25年以上、現場・介護施設の管理者・ケアマネジャー(介護支援専門員)を経験。2013年に株式会社はなひろを設立し、福島県須賀川市・郡山市・矢祭町でデイサービスなどの介護事業所を運営しています。一般社団法人 全国介護事業者連盟 福島県支部 副支部長。

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